カラフルな世界、モノクロの日常

鉄道、城、サッカーなど、自分が興味を持っていることを思うがままに書いています。yahooブログ終了に伴い、はてなブログに引越ししてきました。

『原発のコスト―エネルギー転換への視点』

原子力発電は安くないのではないか?
というのは、実はけっこう昔から言われていたことであるように思います。
ただ、原子力で作られた電力を使うことが日常になり、大きなトラブルもなく、電気料金も高くないという状況ではこの問題はそれほど重要なことではなかったため、顕在化することはほとんどありませんでした。

しかし、東日本大震災により状況は一変しました。
いつまでも終わらない福島第一の事故対策と巨額の損害賠償。見えない廃炉廃棄物処理
立地自治体に対する多額の給付金や電力会社からの寄付金などの実態も明らかになりました。
原子力発電に対する考え方は多様なれど、この点についてはだれもが頭に?を浮かべたはずです。

そんななか、この疑問に端的にこたえてくれたのがこの本です。かなり話題にもなりましたよね。


そして最近では、原子力を推進する立場の人たちであっても、安いという面を強調することが少なくなったような気がします。
例えば、関西電力のホームページ。他の発電方法よりも安いコストを提示しているにもかかわらず、原子力発電は「他の発電方法と比較しても遜色ない水準です。」という微妙な表現になっています。
http://www.kepco.co.jp/siteinfo/faq/energy/9098895_10614.html

さらには、原子力発電は安くないということを直接、間接的に証明するようなニュースが数多く報道されるようになりました。

最近目についたものだけでもこんな感じ。

原発安全対策に2.2兆円 40年運転では回収困難 電力9社アンケート
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140829-00010000-qbiz-bus_all
自由化後も原発の電気価格保証 建設・廃炉費用確保へ
http://www.sankei.com/life/news/140822/lif1408220018-n1.html
原発の電気価格保証 自由化に備え経産省が支援案
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDF21H12_R20C14A8EA2000/

結局は、制度や政策で何かしら優遇策を講じないと原子力発電は成り立たなくなっているわけです。
もっとも、今までだって多額の税金が投入し、電力会社に独占的な地位を与えたうえで成り立っていたわけですから、その図式は変わらないわけですが…
(ここまで考えると原子力が儲かるというのは、税金という他人の財布をあてにした身勝手な議論だなって思います)
冷静に考えて、こういった優遇策がないと成り立たない事業というのはそもそも競争力がない(=儲からない)ことになるわけなので、普通の企業であれば撤退を考えるはずです。
だから、営利を追求する株式会社である電力会社は原子力をやめた方が良いですね。

そのうえで、原子力を続けるかどうかは国策(=収益は二の次)として判断するべきでしょう。
安全保障上の観点などから続けるべきだということが国民の意思として明確になるならば、税金を投入して進めればよい。電力会社に押し付けるのは筋違いです。

個人的には、原子力につぎ込む税金を再生可能エネルギーの普及と研究開発につぎ込めば、20年後には世界でトップに立てると思うのですが…
そもそも、基幹となるエネルギーというのは時代とともにうつりかわるものですので、いつまでも原子力固執していても仕方ない(そもそも原子力が基幹エネルギーの地位を獲得したことは今まで1度たりともなかったわけですが)。次が見えているのだから、そこに取り組まないといけないと思うのです。

皆様はどう考えますか?


大島堅一『原発のコスト―エネルギー転換への視点』(岩波新書、2011年)
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