カラフルな世界、モノクロの日常

鉄道、城、サッカーなど、自分が興味を持っていることを思うがままに書いています。yahooブログ終了に伴い、はてなブログに引越ししてきました。

Tanjong Pagar Railway Station

マレー鉄道の始発シンガポール駅(タンジョン・パガー駅)はシンガポールの中心街の南のはずれ、ケッペル・ロードに面した頭端式の駅でした。
過去形にするのは、2011年6月30日をもって廃止されてしまったためです。
現在のマレー鉄道のシンガポール側の起終点はウッドランズ・トレイン・チェックポイントに移っています。

2013年11月14日、出張の帰りに少し時間が取れましたので、廃止されたシンガポール駅を見に行きました。
マーライオンを見た後、歩いて15分ほどで到着。

駅の周囲はフェンスで囲われています。歴史的建造物として保存し、博物館にするという話ですが、そのための工事が始まっている気配はありませんでした。
周囲には新しいマンションやオフィスビルが立ち並び、高速道路には車があふれかえっていますが、駅の周囲に人影はなく、文字通り都会のエアポケットという感じです。

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駅舎は石造りで、正面のアーチが重厚さを醸し出しています。
一方、側面は同じ石造りでも種類が違うのか、少し茶色がかっています。
動いているのかわからない時計が、何とも言えない雰囲気です。

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駅の裏には2本のホームが伸びています。
いろいろ調べると、2面3線に機回し線をもった構造だったようです。
駅舎近くのホームが広くなっている部分は荷物用でしょうか?

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線路は完全にはがされてしまっており、一面の草地になっています。
隅にある2階建ての建物は信号所かなにかと推定し撮影してみました。
ただ、現役時代を知らないので、これが鉄道用の建物なのかどうかは知りません。

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この駅が現役だったころの記述が、伊藤伸平『マレー鉄道で朝食を』(凱風社、1991年)にあります。
この駅についてはいろいろな本で記述されていますので、この本が適切かどうかは分かりませんが、
他に思いつかなかったので…


 高天井のシンガポール駅構内。話し声が良く響くこともあって、列車を待つ人の数に比べて旅立ち前のざわめきが大きく聞こえる。待合室のベンチには、今や日常の風景となった中国系の顔、マレー系の顔、インド系の顔、それに白人バックパッカーたち。さらに、タイへ帰るのだろうか、黄色い袈裟姿の僧侶まで、実に多種多様な顔、衣装が見られる。
 あたりがどんどん高層建築で埋め尽くされていくシンガポール中心部のはずれにあって、1930年代に建てられたというシンガポール駅は、今でもどことなく「旅の情緒」を感じさせる、そんな建物だ。
〔…〕
 プラットフォームに入るとすぐにシンガポールの出国審査がある。シンガポール国内で、乗客の乗り降りできるマレー鉄道の駅は唯一ここだけ。つまり、列車に乗ってしまえば、次に停まる駅はもうマレーシア国内なのだ。シンガポールの出国審査カウンターは二手に分かれている。シンガポール人とそれ以外だ。乗客はどう見ても旅行者より地元民が多そうに見える。こうして区別されて並ぶと、圧倒的に「シンガポール人以外」の列が長い。地元民に見える人たちの大部分は、どうやらマレーシア国籍らしい。
 シンガポールの出国審査を抜けると、今度はマレーシアの入国審査。まだシンガポールの土の上にいるのに、マレーシアの入国審査とは何だか変な感じだ。これも列車に乗った後、またすぐ次の駅で入国審査などを行なって時間をとってしまうことを防ぐための方法なのだろう。マレーシアの入国審査は、マレー人、シンガポール人、その他の三つのカウンターに分かれている。出発まで20分ほどしかないのに、長蛇の列を作るマレー人のカウンター。ほとんど並んでいない「その他」のカウンターを通り抜ける僕は、本当にマレー人たちが全員通り抜けられるのか、ひとごとながら心配になってしまう。
 入国審査を無事に終え、いよいよ列車の待っているプラットフォームへ。このプラットフォームの外側は鉄格子が張られている。鉄格子の先がシンガポール、今、僕が立っているところがマレーシア。理屈ではわかっていても、なんとなく解せない。シンガポール側から鉄格子越しに飲物やスナックを売る物売りがいる。彼は理屈の上では国境越しに物を売っている、小規模な国境貿易商人ということになるのだろうか。
(38~40頁)


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