日本の通勤ラッシュは過酷で、着席への需要は根強いものがあります。
輸送力の増強は至上命題でしたし、ラッシュの緩和は政治家の公約になるほどでした。
それを受けて優等車両を保有している小田急や京成、近鉄などは昔から通勤ライナー的な性格の列車を運転していましたし、京急では、快特用の2ドア車を使用したウィング号が30年以上の歴史をもっています。
しかし、近年は優等車両を保有していない会社が座席指定列車を設定したり、座席指定車両を導入する例が相次いでいます。
新型コロナにより需要そのものが縮小したこと、結果、輸送力増強とラッシュの緩和が至上命題ではなくなったこと、そして、デュアルシートの普及により専用車両を準備する必要がなくなったことが大きいでしょうか。
さらにいえば、今後人口が減少しパイが小さくなる中で、付加価値を高くすることで売上・利益を確保しようという営業努力の賜物ということになります。
特別料金が不要な列車に特別車両を連結するのは、東海道線や横須賀・総武快速線が嚆矢だと思いますが、南海や名鉄の例はあるものの、なかなか普及しませんでした。
状況が変わったのは、宇都宮線や高崎線にグリーン車が導入されたことです。そして、この成功により、常磐線や中央線にグリーン車が導入されていくことになりましたし、東急などや京王といった比較的短距離で通勤輸送がメインとなっている路線にも拡大したのは驚きでした。
個人的には、こういった追加コストにシビアといわれていた関西地区において、京阪がプレミアムカーを導入したことにびっくり。更にはその動きがJR西日本の新快速や阪急に波及したのも驚きです。
また、京王や西武、東武は新たにデュアルシートの新型車両を増備して通勤ライナーの運転を始めました。
新型車両といっても、日中はロングシートに転換して一般列車に充当できますので、徒に保有車両を増やすことにはなりません。
内装を転換して使うというのは583系みたいですね。デュアルシート車は座り心地が良く、ロングシート状態でも特別感があって好きですが、20m級4ドア車の場合、扉間の座席数が7席から6席に減ってしまうのが玉にキズという感じがします。
2017年運行開始の西武「S-TRAIN」は7年、翌年運行開始した「京王ライナー」は6年の歴史があり、すっかり定着したようです。
そして、土休日には観光用の座席指定列車も設定されるようになりました。
前置きが長くなりましたが、そんな座席指定列車に乗車した話です。
3月23日の土曜日、9:00発のMt.TAKAO1号の高尾山口行きです。
座席指定料金は410円。運賃が430円ですので単純に倍ということになります。
それでも混雑が激しい京王線において着席が保証されるというのはメリットですが、運賃が比較的割安な京王ですので、けっこう高いな、という印象を持ってしまいます。
車内は、車端部以外クロスシートに設定されています。
ドア間のシートは3列ありますが、1列目と3列目は戸袋部に半分掛かっており、車窓は期待できません。
照明を電球色に、そして中吊り広告もなくすことで高級感と落ち着きを演出していますが、頭上の吊革が通勤用車両であることをいやでも思い出させてくれます。
この日は、昼から雨の予報で気温も低かったので、観光客も少なめ。私がいた車両の乗客は5人ほどだったと思います。
高尾山口までの所要時間は43分。同区間を走る特急が55分ほどですので、かなりの快速。
乗車のみの明大前を発車すると、一気に加速。全列車が停車する調布を通過したのは新鮮な感じがしました。
明大前を出ると高尾山口まで停車駅はありませんので、この先も、普段停車する駅を通過する風景が見られるとワクワクしていたのですが、府中の手前で徐行、運転停車しました。
その後も、分倍河原、聖蹟桜ヶ丘、高幡不動、北野、めじろ台、高尾と特急停車駅に運転停車。
府中から先はかなりスジが寝ているみたいです。
かなりゆっくり走った感じでしたが、定刻で到着。速達性を求める列車ではないということだと思います。
雨なので高尾山へはいかず、中央線、横浜線と乗り継いで、橋本から京王相模原線に乗車しました。
多摩ニュータウンを貫き、橋本で終点となっている相模原線ですが、1980年代まで津久井湖方面への延伸が計画されていました。更に西進して富士吉田方面を目指す構想もあったようです。
もし実現していたら、デラックスな特急専用車両が登場していたかもしれません。
橋本駅前はリニアの工事が始まっています。
再開発により京王の橋本駅も移設されるとのこと。延伸を見据えた構造になっている現在の駅がなくなれば、延伸構想は完全に過去のものになります。
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